返事ははじめからわかってる。

だからわたしは、わざとこうやって尋ねた。



「ああ。

……これから一緒にいるなら、早いもんだろ」



「ふふ。……うん、そうね」



ぎゅうっと手に力を込めて、距離をなくす。

潮風を孕んでふくらむ髪を撫でるように梳いた織春が、その手を頬にすべらせた。──ああ、触れる。



「……ん」



やっぱり織春の隣は、心地いい。

キスを受け止めて微笑み合い、指を絡め合う。のんびり砂浜を散歩して、ゆっくりと沈んでいく夕日で染まるオレンジの中、どちらともなくキスをして。



帰ったその先で、胸には新しいペンダント。

月を象徴にしているのは、月霞。──花を象徴にしているのが、累。




「なにそれ、新しいペンダント?」



「うん。織春が買ってくれたの」



シルバーでできた月のペンダントと違って、白いマーガレットのペンダントは華やかに見える。

高くはないのだけれど安っぽく見えなくて繊細なデザインのそれは一目惚れしたもので、帰宅していちばんに千瀬がめざとくそれに気づいた。



「っ!?莉胡ちゃん!?

もしかして彼氏ができ、」



「親父うるさい。

親父が帰ってきてないから知らないだけで、莉胡は前にも男いたから」



「あらあら。

デートだったの?莉胡ちゃん」



──デートを終えて帰ってきたら騒がしいのは、どうやら千瀬パパが帰ってきたらしく。

ひさしぶりに、合同で晩ご飯になったからだ。織春はちゃんと家まで送ってくれたけど、これだけ騒がしいと、目撃されなくて良かったと思う。