「おー。マジっぽいじゃねえの」
学校につけばすぐ、莉胡や春から話を聞いたのか、アルトにニヤニヤされた。
この間まで莉胡のことが好きなんじゃないかって聞いてたくせにそのてのひらがえしを見る限り、相手が誰であれ、ただ揶揄いたかっただけでしょ。
「ちーくん、昨日もしかして由真ちゃんと約束してたのー?」
「……そんな感じ。
莉胡は春とふたりで勉強したんでしょ?」
「そーそー。
んで、それなら俺ら邪魔できなくね?って、結局男4人でファストフード店だぞ。むさ苦しいっつーか、きっついわー」
「……?
じゃあ、春と莉胡はまた別のとこ行ったんだ?」
いつも全員で一緒に行くのは、おなじみのファストフード店。
そこに4人で行ったなら、莉胡たちは別のカフェでも行ったのかと。言えば、アルトとトモが顔を見合わせたあと。
「……あー、まあ、」
「莉胡の家行ったらしいけどねえ。
……高校生男子が彼女の家にふたりきり、って、さあ?」
にやにやにやにや。
アルトの言いたいことはわかる。わかるけど。どう考えたって、自分のことを順に好きになってくれればいいと言う春が、簡単に手は出したりしないでしょ。
「でもあいつら今日一緒に来たしよー。
莉胡は、なんかすげえしあわせそうな顔してね?」
「………」
ちらりと視線を向けた先。
春と何かを話している莉胡はたしかに楽しげで、正真正銘の彼氏彼女、という雰囲気がある。──昨日までは、そんな風には、見えなかったのに。
たった1日で、何が変わったのか。
それはわからないのに、ただ確かなのは、莉胡の表情が十色さんの隣にいたあの頃みたいに見えるということ。