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──やたらと、視線を感じる。

それは当たり前に、普段俺がいることのないはずの駅にいるからで。話しかけられないだけマシか、と腕時計に視線を落としたとき。



「ごめんね千瀬くんっ、おまたせ……!」



ばたばたと駆け寄ってくる由真に「おはよう」を告げると、笑顔でおはようと返してくる。

由真がいることで余計に同じ高校のメンバーから視線を感じるけど、何事もなかったかのように学校へと歩き出す。



隣の彼女が途中でご機嫌なことに気づいて、「なに?」と声をかけたら首を横にふるくせに、何度もうれしそうな顔をされると気になって仕方ない。

なんなの、とあきれたように言えば、ようやく「あのね」と由真が答えた。



「ほんとにこうやって迎えに来てくれるなんて思わなくて。

ふふっ、しあわせだなあって思っちゃったの」



「現金だね。

そういうのは春にされたときによろこびなよ」



まあ喜ばれて悪い気はしないからいいんだけど。

一応こつんと小突いたら、反省してなさげに「えへへ」と笑うから、あきれを通り越してもはや笑ってしまった。




「そういえば千瀬くん。

春くんと付き合ってからも莉胡ちゃんとは一緒に登校してたよね?一緒に来なくてよかったの?」



「あー……いいんじゃない?」



「……?」



「……莉胡に今日迎えにいかないこと、伝えてないし」



「えっ!?

莉胡ちゃんびっくりするんじゃない?」



「……文句言いそうだけど、テストだし遅刻することはないよ」



俺が休んでた間は、ちゃんと起きて行ってたわけだし。

いつまでも過保護にしてられないな、と考えた結果がこれだ。──いや、違う、か。