……まあ、春が莉胡にどれだけ本気なのかは、よく知ってるから。

振り向いてくれる確率は限りなく少ないだろうけど、莉胡が好きなのは、いまも十色さんだ。



それでも、自分を好きでいてくれる男を選んだ。

……なら、逆に考えると、春だって自分を好きでいてくれるこの子を選んだ方が幸せになれると思うかもしれない。



「どうしても……だめ、かな」



「……でもまあ、考えなくはないよ」



「え……?」



「俺が別れさせない理由は、"莉胡が幸せである"ことが条件なの。さっきも言ったでしょ。

……莉胡が春と付き合ってて幸せじゃないなら、別れさせはしないけど、協力ぐらいはしてあげる」



彼女が、目を見張る。

それから、「でもそんなのどうやって調べるの?」と聞いてくるから、口角を上げた。




「簡単だよ。

……俺のケータイ使っていいから、莉胡にいたずら電話して。このあいだまで熱あったし、『また高熱出した』とでも言えばいいんじゃない?」



「そんなので、わかる……?」



「みんなで勉強する、って言ってたけど。

俺がいない絶好のチャンスを春が逃すわけない。……だから春と莉胡は、いまふたりだけで一緒にいる」



俺の目が届かないところで、春が莉胡をどうしようと自由だ。

普段なら入る牽制が入らないなら、わざわざみんなで、なんて面倒なことしなくていい。彼女とふたりで勉強したいと言い張れば、まわりもあっさり引いてくれるはず。



「莉胡はたぶん、春にことわって俺のところに来ようとすると思うし。

……そこで俺が電話変わるから。うまく誤魔化す」



「うん、わかった……

とりあえず、やってみる……ね」



これでダメなら、あきらめる。

そうつぶやいた彼女にスマホを手渡し、莉胡にかければ、なぜかあっさり電話に出る莉胡。……これじゃあ春も苦労するな。