「ミヤケのことで話って、なに?」
「いきなり本題に入るんだね」
「俺はここにテスト勉強しに来たわけじゃないよ」
一応勉強はするけど。
ミヤケのことで話があって来たんだから、とうながせば、彼女は「わたし、志賀くんの彼女と友だちで、」とようやく口を開いた。
……そういえばこの間、いまはかわいい彼女いるとか言ってたなあいつ。
いいって言ってんのに、無理やり写真も見せられたけど。
「志賀くん……
七星くんのこと、すごく心配してて。昨日話してたら、なぜか莉胡ちゃんが下坂くんと付き合ったことも知ってて、心配だって」
……いい親友だとは、おもう。
でもある意味お節介というか、なんというか。それがミヤケだってことも、わかってるんだけどさ。
「ずっと志賀くんは、
『莉胡と千瀬にうまくいってほしい』って言ってて」
「……また無茶な」
「む、無茶じゃないの。
それでわたしも相談があって……わたし、」
テーブルの下で見えないけど、おそらくスカートを握ってるんだろう。手に力が入ってる。
ぎゅっとまぶたを伏せて、それからゆっくり大きな瞳をのぞかせた彼女。甘めの顔立ちが、どこか悲痛に見える。
「わたし……下坂くん……
ううん、春くんのことが、好きで、」
「……春?」
「もともと……同じ中学出身で、付き合ってたの。
春くんに元カノが何人かいるんだけど、その中でもいちばん長く付き合ってて。みんなにここまで来たら別れないって言われてたのに、っ……春くんに、ふられたの、」