志賀。それは、ミヤケの名字だ。

どうしてそれを彼女が知っているのかは知らないが、ここで無視するとまずい予感しかない。



俺が間違いなく返事をすることをわかっていたかのようにその下に書かれた番号をスマホで打ち込めば、メッセージをやり取りできるようになる。

『ミヤケのことで話って何?』と尋ねれば、彼女からは『たくさんあるから、放課後じゃだめかな?』と返事がかえってきた。



放課後というワードに一瞬悩んだが、『わかった』とかえして、スマホを片付ける。

ミヤケのことが頭に引っかかってはいたが、テストは問題なく終了。──そして、放課後。



「莉胡、

悪いけど用事あるから、今日は勉強会パスで」



「え?あ、うん。わかった」



「ん、じゃーね」



ひらりと手を振って彼女に「行こう」と声をかければ、にこっと笑ってうなずいてくれる。

どことなく、莉胡と正反対そうだな、と思った。




「莉胡ちゃんと七星くんって幼なじみなんだよね?

ほんとにすごく仲良しなの見ててわかるよ」



「まあ、どう見ても仲は悪くないだろうけど」



「莉胡ちゃん気にしてたよ?

予定ことわった七星くんが、わたしに行こうって声掛けたから」



「別にやましいことなんてないんだからいいよ」



ふっと息を吐いて、どこに行こうか、と考えた結果。

テスト勉強できて、なおかつテスト実施日はほとんど人が来ない図書室で行うことにした。テスト前は席が争奪戦になるぐらい利用者が多いけど、実際にテストが行われているときは、みんな家で勉強するからね。



「ふふ、ゆっくりお話できそうだね」



カラカラと足を踏み入れたそこは、無人。

まあね、と席についてから、「それで」と話を進める。