間違った選択が、どこからだったのか。

考えれば考えるほど、わからなくなる。



【Side Chise】



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──週末が開け、テストが開始し、今日で3日目だ。

俺が休んでいた数日の間に、春と莉胡がうまくいったことはどうやら知れ渡っていたようで。莉胡が俺の名前を呼ぶよりも圧倒的に、ほかの女の声が耳に届くようになった。



「千瀬くん、いっしょに勉強しよう?」



「テストがぜんぶ終わったら、遊びに行こうよ」



俺は莉胡に近づく男を牽制していたけれど。

逆にどれだけ莉胡が俺に近づく女を遠ざけていたのか、はっきりと身をもって実感する。



「ごめん、俺遊ぶのとか好きじゃないし。

……悪いけど、ほかあたってくんない?」



「えー、千瀬くん、」



莉胡という幼なじみである強敵がいなくなった今、女たちにとっては俺を好きにし放題。

……なのかもしれないが、莉胡がいちばん優先する男が、春になっただけで。




「あの……

七星くん。これ、落としたよ」



俺は別に何も変わらないんだよな、と考え事をしていたせいだろうか。

気づかなかったそれを、反射的に「ごめん、ありがとう」と受け取ろうとするが、その手にある紙に見覚えはない。



「それ俺のじゃな、」



「七星くんって意外とおっちょこちょいなんだ?

……ふふっ、これ、お返ししとくね」



俺のじゃないと、言い切る前に。

彼女は俺にその紙を押し付けて、何事もなかったかのように去っていく。



……なにこれ、俺への嫌がらせ?



いまの子誰だったっけ、と興味のなかったクラスメイトの名前を思い返しながら、何気なくその紙を開き。

ばっと顔を上げれば、それを俺に渡した張本人と目が合って、にこりと微笑まれた。──『志賀くんのことで話があります』