「それとも、なに?
……ほかの女の子と同じこと、莉胡もしてほしいの?」
「ッ、」
意地悪な、笑顔で。
わたしには向けてくれることのない表情で、感情のこもらない声で、そんな風に囁かれる。
そこには、幼なじみなんて関係は存在しない。
わざとらしく男と女であることを示すように突きつけられた言葉に、ひどい、と思ったのが、第一印象だった。
「ひ、どい。……わたしは、」
「ああでも、莉胡には十色さんがいるもんね。
……どういうこと教えてもらったの?」
ひどい。……ひどすぎる。
いつも十色とわたしのことを誰よりも応援してくれていたのに、わたしをあざ笑うみたいに、十色との関係を浮き彫りにして。
「それとも……
まだ教えてもらえないから、俺に聞くの?」
「ッ、最っ低……」
きらいだ。こんな千瀬なんて、大嫌いだ。
わたしがどれだけ十色のことを好きなのか、ぜんぶ知ってるくせに。いままでの努力も全部、その一瞬で馬鹿にされたような気分だった。
聞いたのはわたし。
しつこくしたのは、わたし。……だけど。
千瀬からまさかそんなことを言われるなんて思わなかった、という文句も、わたしのわがままでしかないんだろうか。
……ああ、もう、泣きそうだ。
「泣くの?
……莉胡っていつも都合悪いと泣くよね」
グサグサと、心に刺さる鋭利な言葉たち。
もう自分の心をかばうことすら出来ずに、ただただ視界が滲んでいくのを他人事のように見つめていた。