「──莉胡!!」
そんな声が響いたのは、一体莉胡と我を忘れるぐらいにキスを続けて、どれぐらい経った時だったか。
がたんと玄関で音がして莉胡が肩を震わせた莉胡。それをまた安心させるように口づけたと同時にリビングの扉が開いて、入ってきたのは。
「ち、せ……?」
今までどこにいたのか、ずっと帰ってきていなかった莉胡の幼なじみ。
スマホが放つライトだけでもわかるぐらいに、全身びしょ濡れ。──たった今まで、千瀬が外にいた証拠だ。
「はっ…、春、お前なんで……」
「今日は雷雨になるからって……
春が一緒にいてくれることに、なって……、」
だいぶ安心したのか、俺の代わりに莉胡が説明した。
それを聞いた千瀬は、「雷雨になるって知ってたなら連絡してくれればすぐ帰ってきたのに、」と、急いで帰ってきたのか上がっている息を整える。
「まさかこんなに激しい雷雨になるなんて知らなくて、雷鳴ってすげえ焦ったんだから、」
「ご、ごめんね……
春もいてくれたし、千瀬に迷惑かけたくなくて、」
──ぱちん、と。
言葉の途中で一気にまわりが明るくなって、莉胡がぱちぱちとまばたきした。
「……停電、なおったみたいだな」
「よ、かった。……春、ほんとに、ごめんね。
……ずっとそばにいてくれてありがとう」
雷の音はまだ鳴っているが、はじめに比べてかなりマシになった。
そこでようやく千瀬の姿を見てびしょ濡れなことを思い出したらしい莉胡は、洗面所からあわててバスタオルを持ってくる。
「千瀬、お風呂入って温まった方がいいわよ。
そんなにびしょ濡れだと風邪ひいちゃう……ごめんね、わたしのために帰ってきてくれたのに……」