我ながら、未練がましいというか。

ふったと捉えていいと言われたのに、それでも、まだ。──あきらめる気は、どこにもない。



「……それってわたしへの嫌味?」



千瀬が莉胡と帰れ、と言い出したのには普通におどろいたが、本当に用事があるらしい。

ファストフード店に俺らと莉胡を残して、千瀬は一足先に帰った。



「いや。そういうことじゃねえよ。

お前が振り向けば自分の想いが実る奴らは俺以外にもいるだろうしな。……逆に、お前が想ってるヤツが振り向けば、莉胡の想いが実るんだろ」



「……それでも、

どっちもうまくいかないから片想いなのよ」



莉胡がつけている、月のペンダント。

出会った時には既につけていたもので、かなり大切にしているように見える。おそらくは、想い人からもらったものなんだろう。



莉胡のことばかり、考えているせいで。

なんとなく、知りたくないことまで察してしまう。




「……莉胡に想われてるその男はしあわせだな」



「どうだか。

……少なくともわたしはしあわせだったけれど」



"彼は……"

どこか思うところがあるようにそう言いかけた莉胡は、そのあと口をつぐんで誤魔化した。



「……俺は莉胡に、すぐに好きになって欲しいとは思ってない。

ただ、すこしでも早く彼女になってくれたら。……俺が独占してほかの男を敬遠させられるなんて、そんなわがままは抱いてる」



「……あなたは本当に健気ね」



「ただ独占欲が強いとも言えるけどな」



「本当に独占欲が強かったら、口には出さないのよ。

……それ以上に大事にできる人だから、そうやって口に出すの」