一目惚れだって言ったあのときの言葉に。
──いまは嘘なんて、ない。
【Side Oruha】
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「……ほんと千瀬ってば心配性よね。
1日くらいひとりで帰ったって何もないっていうのに、まったく」
莉胡と出会った季節の春からうって変わり、制服もブレザーを脱いで白いブラウスが目立つ季節になった。
隣を歩くまっさらなブラウスはやけに眩しい。……たぶん、セーラー服とか、似合うんだろうなと、隣を歩く莉胡を見て思う。
「本人がいてもいなくても、千瀬って言ってるな」
「……え、そう?
そんなことないと思うけど……ずっと一緒にいるから、逆にいないと違和感感じちゃうのかしら」
千瀬と莉胡の話を聞いている限り、莉胡にはもともと彼氏がいた。
そのあいだのふたりの距離感までは知らないが、もし、千瀬との距離感がいまと変わらないなら、それはそれで彼氏も可哀想だろう。
……彼氏がいても変わらない対応をする莉胡に心苦しいのは、千瀬も同じだろうけど、な。
どういうわけか千瀬は、莉胡を好きじゃないと言い張っている。
ただの意地ではなく、そこに深い訳がありそうで。
だからこそ、誰も踏み込んでは聞けないまま。
「千瀬と付き合おうって考えたことはないのか?」
「千瀬と?
……そうね。考えたことはあるけど、結局いまの距離感がいちばん落ち着くから、千瀬のことは好きになってからしか付き合えないと思う」
「……可能性がないとは、言わないんだな」
「だってどんな瞬間に誰を好きになるかなんて、自分でもわからないでしょう?」
まったくもってその通りだと思う。
俺にとって莉胡が特別な存在になったように、人それぞれのきっかけがある。──そのパターンは人の数だけあって、出会いの数だけあるものだ。
「千瀬のこと好きになったからって、千瀬がわたしを好きでいてくれるとは限らないし。
そう簡単にうまくいかないから、恋ってむずかしいのよ」
「……でもひとりの人間が振り向けば、
うまくいくってこともあるだろ?」