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──ああ、困った、と。
目覚めた瞬間、何も言われなくとも自分の立ち位置を自覚した。
午前4時45分。
夏とはいえ、さすがにまだ日が上りきらない中。
──俺は完全に、莉胡と添い寝して寝落ちたことを、後悔していた。
昨日は莉胡を寝かしつけ、そのまま幼い頃から変わらない寝顔だけを軽く見て帰るつもりだった。……のだが。
体調を一度崩したというのにいつも通りの生活を送ってすこし。
さすがにちょっと疲れたようで、幼なじみの変わらないぬくもりを抱きしめていたらねむってしまったらしい。
やましい気持ちなんてないと言い切った昨夜の自分と、いま現在黙々と浮かんでくる感情を比べて、思わずため息が漏れた。
……やましい気持ちがどこになかったんだか。
「無防備だね、相変わらず」
すやすやねむっている莉胡の頬を、後ろから抱きしめたままの状態でするりと手の甲で撫でる。わずかに冷たくて、滑らかな莉胡の頬。
ん、と小さくこぼした彼女は安心しきった寝顔を見せて、触れ合うぬくもりに身を寄せるように擦り寄ってきた。
「、」
ああ、もう。
起きたら莉胡に、無防備だって怒らないと。
──昔からずっと。
莉胡は俺が相手なら、まるで異性の兄妹みたいに無防備な格好で俺と接する。
それを嬉しくも思ってた。
でも、たまらなく恨めしかった。
俺は莉胡のことを心底大事に思ってる。
月のペンダントの約束よりも、ずっとずっと前。──まだ幼稚園に入った頃とか、そんなとき。
「ちせくん、ずっとりこちゃんといるから、きらい」
いまなら笑い話にしかならないけど。
仲の良かったはずの男子が初恋なんて文字もまだ知らないその頃に莉胡を好きだったようで。当時まだ4歳にも満たなかった俺はその言葉に傷ついたんだと思う。