「それでも好きだって言ったら?」



「……それは、わたしがとやかく言うことじゃないもの。

好きって気持ちを簡単になくせないのは、わたしがいちばん知ってるから」



「……お前らしいな」



莉胡が愛してるのは、あの人だけで。

誰よりも自分を想ってくれる彼女を追放したあの人は、いま、どんな気持ちでいるのかさえ。



『──お前がいなくなっても、俺は、お前の味方でいるから。

月霞の幹部候補とか俺の親友とかじゃなくて。七星千瀬のことを、俺は信じてるからな』



「……あほらし」



──わからないって、いうのに。




「莉胡、席とってて。

何か食べたいものある?買ってくるけど」



「うん、待ってるわね。

メニューはいつも通りで」



お願いしまーす、とにっこり微笑む幼なじみ。

いつも通り、なんていうリクエストが通じるのも、俺らが幼なじみだからであって。



「……あれ?

莉胡ちゃんに誰か声掛けてるよー?」



フライドポテトとミルクティー、という文字通りの軽食は、莉胡の分。

それと自分の注文を終えて、「先行ってていい」と春に言われ、千咲と階段を上ると。



俺の幼なじみは、たしかに男に話しかけられていた。



「……ちせ、」