ちょ、ちょっとまって。
お願いだからそれ以上言わないで。本当に心臓が一生分の働きを終えてしまうんじゃないかって思うほどのスピードで動いてるんですけど……っ。
「まって……おねがい。
恥ずかしくていたたまれないから……」
「はあ? ったく……
俺の気持ちに追いつこうなんて何百年早いからね」
「恐れ入りましたごめんなさい」
それにしても、よくもぺらぺらとわたしへの気持ちを真顔で言えるな……
というか恥ずかしさでしれっと流したけど、ファーストキスがどうたらとか、わたしのことがかわいいとしか思えないとか、問題発言多くなかった?
「ファーストキス、って、なに……」
「……やっぱ覚えてないの?
俺が月のペンダントの約束したとき、莉胡一瞬で笑顔になったじゃん。泣いてた後だったから色々悲惨だったけど笑顔はかわいいなと思ってたら、莉胡自分から俺にキスしたんだよ。頬じゃなくてくちびるに」
しかも千秋と親の前で、と。
まったく覚えてない自分のファーストキス経験に、頭の中が真っ白になる。
うそでしょ……?
わたしそんなことした……? というかもしそれが本当ならどうして千瀬にキスしたのか過去の自分に教えて欲しいし、なんならその頃の強い精神を今のわたしにも分けて欲しい。
千瀬にちょっと甘く囁かれただけで、真っ赤になってしまうわたしに。
我ながら単純すぎるというか、照れ屋というか。
「……まあ、ファーストキスとかどうでもいいよ。
いま莉胡が俺といて、この先もずっと俺の隣にいてくれるなら」
「っ、だから、甘いこと言わないの……!
わたしだって由真ちゃんと付き合ったって聞いた時ショックだったし……ちゃんと付き合ってるみたいだったから……ちゃんと付き合う彼女のいちばんはわたしがいいって……ずっと、思ってたのに……」
言葉が後半につれて弱くなる。
そんなわたしをじっと見つめた千瀬は、「莉胡」と名前を呼んで、小さく笑った。
「……お前やっぱり、かわいいね。
──安心しなよ。好きな相手と付き合うのは、莉胡が最初で最後だから」