だって、こんなの真顔でいろっていう方がむずかしい。

どうしようもなく笑顔になってしまうわたしを見て何度目かのため息を落とした千瀬が、わたしの左手を持ち上げて。



「……あのペンダントの約束のせいで、

俺の初恋終わってくれないんですけど?」



どこか意地悪に。

だけど甘ったるい囁きに、顔が熱い。



「……千瀬のくせに」



「はあ?

誰のためにこんなに大勢の前で言ってると思ってんの?お前俺のことなんだと思ってんの?」



「だいすきな幼なじみで、

だいすきな初恋の人でいまもだいすきな人?」



「ッ、お前……」




千瀬は意地悪になるとわたしの名前を呼んでくれなくなる。

だけどそれもどうしようもないぐらいの愛情だってわかってるから、千瀬に抱きついた。



「……指輪のサイズ教えるからペアリングつくってっていったら、つくってくれるの?」



「ペアではめる相手が俺だとしたら考えなくもないよ」



「……ふふ」



ああ、もう。

こんな気持ちでここにきたわけじゃないのに、と思う内心とはちがって、笑みを隠しきれないわたし。



「……って、ことなんで。

とりあえず春に殴られてください。──また、十色さんのせいで、行き場のない感情をつくった春のために」



ずっと。

正義感が強くて、どこまでもまっすぐな幼なじみのことが、好きだった。──わたしが初恋を抱いた、あの瞬間から、ずっと。