あの頃の約束をまだ覚えてる、なんて。
そんなことを言えばきっと君は笑うだけで。
──まだ、俺の気持ちには気づかない。
【Side Chise】
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「莉胡、今日どうすんの?
あいつらファストフード食いに行くから一緒に行く?って聞いてきてるけど」
累と同じ学校だからって、喧嘩が毎日起こるわけでもないし。
強いて言うなら累のメンバーといる俺らが多少目立つかな、って感じだけで。
特に今日も何か問題が起こるわけではなく。
いつも通りの放課後を迎え、スクバの取っ手を腕に通し、背負った幼なじみに声をかける。
「あー……うーん……
千瀬はどうするの?みんなと行く?」
「いーよ、どっちでも。
莉胡が行くって言うなら俺も行くし、行かないって言うなら俺も行かない」
……我ながら。
どうしようもないぐらい過保護っていうか、溺愛っていうか。
ただ単純にそれを「好き」と言ってしまえるほど大人だったら。
……すこしは、莉胡を悲しませずに済んだのかもしれない。
「じゃあ……行こう、かな。
帰っても今日は予定ないし、家にいるのもなんだし」
「ん。──千咲、莉胡も行くって」
遠くにいる千咲含めたメンバーにそう声をかけると、莉胡と連れ立ってそちらに足を向ける。
ずっと好きな人と別れたことを、莉胡は正直に話していたけど。それ以上のことは聞くな、という彼女の牽制が、ありありと伝わってくる。
……あんな風に、別れた、恋人のことを。
何度も掘り返されるなんて、たまったもんじゃない。
それは張本人じゃない俺でも、痛いほどにわかる。
幼なじみとしてでもなく、男としてでもなく。
「春って、いままで彼女とかいなかったの?」
──七星 千瀬として。
いままで彼女を見てきた俺だから、わかる。