十色に話した、わたしのいちばんの、約束。

あれは紛れもなく、このときに交わしたものだ。



どうして。

……どうして、忘れてたんだろう。



「っ……、」



──千瀬はあんなに小さな約束を、覚えてくれていたのに。

わたしはそれすらも忘れて、ただ彼が選んでくれただけのペンダントだと思い込んで。



「あんな風に小学生で完璧なペンダントをつくりあげるぐらい、器用なヤツだけど。

……同時に、どうしようもぐらい不器用なヤツだってことも、莉胡は知ってるよね」



幼なじみだから、と。

優しく言われて、思わずうつむく。染めた髪がさらりと流れて、わたしの横顔を静かに隠した。



──ねえ、千瀬。

わたしが千瀬が選んでくれたものだと思い込んで、「十色からもらったの」って、あなたに告げた時。一体どんな気持ちだったの。




「っ、ちあちゃん」



「ん?」



「……どうして今日、教えてくれたの」



目のふちでとどまっている涙を必死にこらえているけれど、震える声は隠せない。

偶然だと言われれば、それまでだ。ペンダントの話を持ち出したのはわたしだったんだから。──だけど、どうしても、知りたかった。



「……俺のかわいい後輩がさ。

莉胡のことをだいすきだから、かな」



聞いた瞬間にあふれる涙に、もう耐えることなんてできない。──もっとはやく、知りたかった。

わたしがもう、あともどりできなくなるよりもはやく。



知りたかったのよ、十色。

──あなたがわたしを本当に好きだったこと、もっとはやく、あなたから聞きたかった。