「……うわ、電話かかってきた。
ごめん莉胡、悪いんだけど3人で先に食材のコーナーまわっててくれる?」
「あ、うん……先行ってるね」
そしてタイミング良くというか悪くというか。
奥さんから電話がかかってきたようで、わたしたちの元を離れるちあちゃん。その瞬間視界に入るアルくんの悪戯な笑みに、背筋が冷える。
「"千瀬がくれた"って?」
「ち、ちがうの。本当にあれは十色からもらったものなの。
でも、あれを選んでくれたのは、千瀬なの……」
「……千瀬が選んだものを、
ほかの男がお前に渡したってことか?」
「……十色も千瀬も、なにも言わないの。
十色がわたしにプレゼントでくれたけど、あれはどう考えても十色の趣味じゃないし……幼なじみが選んでくれたものぐらい、言われなくてもわかるのよ」
十色の持っているアクセサリーとは、すこし種類が違う。
たぶんわたしの幼なじみである千瀬が、彼に頼まれて、代わりに選んだものなのだ。
もらったときから、ずっと。
……なんとなく、気づいてた。
「でもそれなら、
やっぱり千瀬がくれたっていうのはおかしくね~?」
「ちあちゃんも弟の趣味はわかってるし……あれ?」
ちょっとまって?
わたしがちあちゃんと前に会ったのは数年前で、十色と付き合ってからは、1回も会ってない。つまり彼は、わたしがそれをもらったことすら、知らないはず。
なのにどうして……知ってるんだろう。
"月のペンダント"をつけている状態でちあちゃんに会ったことは、一度もないのに。
どうして当たり前のように、ちあちゃんが知っているのか。