「今週末はテスト前だから、その次の週。

……材料は当日買いに行っても間に合うよ」



「うん、なら来週ね」



たのしみ、と頬をほころばせるわたし。

「莉胡は千瀬に甘えすぎ」とお母さんによく言われるけど、こんなふうに甘やかしてくれる幼なじみに甘えずにいるなんて、むりだ。



「ほんと仲良いねえ。

春が間に入る余地もないじゃねえの」



「……興味ねえフリしてんのに、

千瀬が一向に引く気ねえからな。わざとだろ」



「さあ? ……わざとかもしれないけど」



にこり。

めずらしく笑みを浮かべた千瀬は、春から視線をわたしに移し、「髪食べてるよ」と口元に手を伸ばす。




「わ、」



器用に彼の指先が、気付かず食べてしまっていたらしい髪を抜き取る。

咀嚼してから「ありがと」とお礼を言うと、千瀬は「ん」と短い一言だけ。



「髪崩れてきてるし、結びなおしなよ」



「うん、食べ終わったら結びなおす」



朝起きて急いで結んだから、いつもよりちょっと雑になっちゃってるし。

残りのお弁当を食べ終えて片付けると、結んでいた髪をほどく。ふわふわと、広がる髪。



「……結んだとこ、跡ついてる」



わたしよりも一足先に「ごちそうさま」をしていた千瀬が、机にごろんと突っ伏しながら、わたしの髪に触れた。

ふわふわとした髪を優しい手つきで梳かれて……な、んか、気恥ずかしいのはわたしだけ?