「っていうかさ。
なんで遊びに行く海水浴場が東側なわけ……?」
「お前考えてもみろよ。
南側にはあるけど、関東の西側に海はないだろーが」
「じゃあそのまま南側いけば良いのに、
なんでわざわざ東突っ込むんだよ」
それ東西でチームわけしてる意味なくない?
そもそもいままでよく東の海に来てて襲撃されなかったな。人が多いところで喧嘩なんてしたら、それこそ警察沙汰になるだろうけど。
「あのねえ、ちーくん〜。
お前も知ってると思うけど、ぶっちゃけ東より南の方が治安悪いんだよ〜」
「……ああ、あの都市伝説みたいなやつって実在するんだ。
っていうか気安くちーくんとか呼ばないでくんない?」
──結局莉胡とはあれから可もなく不可もなく、現状維持。
夏休みもあっという間に過ぎて訪れた海水浴場へは、累の先代が車を出してくれることになった。しかも遊びに行くわけじゃなく、本当に送迎だけしてくれるらしいから申し訳ない。
そんな中、この車には運転席に先代がひとり、助手席にアルト、そして後部座席に俺とトモ。
……いやまって、組み合わせどう考えてもおかしくない?
こっちの車が4人乗りで、もう1台が6人乗り。
そのうち莉胡と由真は同じ車がいいらしく、トモはなにやらこっちの車を運転してくれている先代とすごく仲が良いらしく、車を指定した。
「じゃあトモと同じ車に乗るわ〜」と言い出したのはもちろんアルトで。
てっきり千咲か羽泉がこっちに乗るんだと思ったのに、「どう考えてもうるさそうだから嫌だ」と拒まれた結果、なぜか俺が乗ることになった。
しかも先代と仲良しなくせに助手席じゃなく後部座席に乗って俺にやたら絡んでくるトモ。
揶揄える場所には躊躇なく口出ししてくるアルトが助手席から振り返って色々言い出すもんだから、面倒すぎる。
「そ〜そ。
一応西所属だけど俺らと仲良くねえ南の組織な〜」
「しかも自分たちの敷地内っつーか、南でしか問題起こさねえから俺らも動けねーし。
東じゃ存在するのかわからない都市伝説って言われてるって聞いてたけどマジなんだな」
なんならいっそ織春をこっちの車に押し込むんだった、と心の中で悪態をつく。
莉胡と由真は、俺も織春も知らないうちに夏休みに何度か遊んだようで俺らなんか気にすることなくふたりで仲良さげに喋ってたし。