.
。
。
.
*
:
◇
『へー。それであいつまだ拗ねてんの?
ほんっと昔からガキだよねあいつ』
──千瀬にあの言葉を言われた日から、数日。
わたしから声をかけるのもなんだし、声をかけても何を言えばわからないというのが続いて仲直りできないまま、夏休みに入ってしまった。
こんな風に何日も話さないというのははじめてだと言ったわたしを面白がっているのか、累の幹部たちも仲直りを手伝ってはくれないし。
このままじゃだめだとわかっていてもどうしようもないと思っていたところで掛かってきた十色からの電話。
特に敵味方を深く考えることもなく出てみたら、「元気にしてた?お姫様」なんていう胡散臭い言葉が返ってきたわけだ。
……まあ胡散臭かったのは事実だけど、半年前まで彼氏が十色だったのも事実。
元気がないことに気づかれて千瀬の話をしたら、冒頭のセリフである。
べつに千瀬は、拗ねてるわけじゃないと思うんだけど。あと千瀬は、ガキっていうほど子どもっぽくないわよ?
「夏休みも一緒にしたいこといっぱいあったのに……」
このままじゃ夏休みの間も仲直りできないのかな、と。
いままで陥ったことのない状況に、一抹の不安。そもそも千瀬には彼女がいるわけだし、夏休みにわたしと遊びたいとすら思わないかもしれない。
『オルハ、だっけ?
そっちのトップの男。あの男とは約束してないの?』
「東西のことで忙しいから無理ってなってたんだけど、十色と直接会話したじゃない?
だから色々と準備する以外のところは空いたみたいで、幹部と一緒に海には行くわよ。あと、ふたりでちょっとデートすることにはなってる」
『ふーん? ……俺ともデートしない?』
「しません」
『……莉胡って1回辛辣になるとほんとに冷たいよね』
織春と向き合いたいと言っているのに、元彼とデートするわけないでしょ。
むしろどうしてすると返事してもらえると思ってるんだ。ポジティブすぎる。
『まあ、そういうのも結局かわいいんだけど』