「俺がついた一目惚れっていう嘘が、
どうして嘘じゃなくなったかわかるか？」
「……嘘だったことも知らないんだから、気づかないわよ」
「お前と千瀬に、近づいた頃。
……俺らは、お前が千瀬のことを好きなんだと思ってたんだよ」
「………」
わたしが、千瀬のことを……？
その好きにふくまれている意味が、恋情だということは、子どもじゃないんだから言われなくてもわかる。──だけど。
「……そんなことないわよ」
どうも納得できなくて眉間を寄せると、織春が小さく息を吐き出す。
ため息でも安堵でもないそれは、なぜかわたしの心臓を速まらせた。
「どこまでもお前が千瀬をまっすぐに想ってるように見えたから。……それに、ハマっていった」
「………」
「別に愛されることに飢えてたわけじゃねえけどな。
……ただ、あまりにもまっすぐだったから、お前にそうやって愛される千瀬が羨ましかったんだろうな」
いや、羨ましいわけじゃなかったか、と。
発言をすぐに訂正した織春が、「知りたかったんだろうな」とつぶやく。 なにを？という頭の中に浮かんだ疑問を口に出すよりも早く、織春が口にした。
「お前のまっすぐな気持ちを、
もし自分に向けられたらどうなるのか」
「……織春」
「ほかの女じゃなく……
"夏川莉胡"に愛されることを、自分で感じてみたいと思ったんだよ」
