「……こんなこと言って動揺させたら信じないかもしれねえけど、いまは嘘じゃない。
ただ、お前に一目惚れだって言ったあのときは、嘘だった」
「……なんで、」
なんでそんな嘘ついたの、と。
か細く震えたわたしの声は、静まり返った部屋ではよく響く。──ホームルーム開始を告げるチャイムは、どこか遠くで鳴っているのかと思うほどに、小さく聞こえた。
「……本当は、知ってたんだよ。
お前と千瀬が、東の人間だってこと」
元東の人間だって確認が取れたのは、昨日だと織春はわたしに言うけれど。
……最初から、わたしたちが西の人間じゃないこと、知ってたの?
「前に聞いたと思うが、羽泉は西の人間を傘下まで把握してる。
この学校に通う生徒は全員、傘下か、傘下がチーム個人で同盟を結んでるチームの人間だ」
だからざっくり言って、西全体。
この学校に東の生徒が通っているということはまずありえないし、そもそもわたしたちが住んでいるのは西。東西のちょうど中心部分に住んでいるから、地区の問題で中学が東だっただけ。
「なら、羽泉がお前たちを知らないのも、
お前と千瀬のデータが西側にないのもおかしい」
「………」
「トモに調べさせたら、月霞関連の情報が出てきた。
……だから俺らで直接近づくことにした」
トモが前に言っていた、学校を休んで行っている仕事。
それが情報屋であることも、わたしはちゃんと、知っていた。──本当は、ずっと前から。
「ただ、容易に近づけるとは思わねえ。
……お前と千瀬が付き合ってねえのは、ラッキーだったんだよ」
一目惚れってことにできる。
そう考えた累の幹部たちと、それを実行した織春。
──すべては西の、計画通り。
最初からずっと、わたしと千瀬は監視されていたようなものだ。