「おかしいと思わないか?」
「……なにを?」
「東の人間が、意味もなく闇討ちする理由はない。
下っ端同士がいざこざで揉めることはあっても、トップの人間が指示してるのはおかしい」
……まあ、そうだろうね。
東のトップが手を出したってことは、意図的な理由があるはずだし。というかさすがにそれは俺も知らないけど、あの人は何がしたいんだろうか。
「その闇討ちが起きた日は。
俺と莉胡が付き合ったことを、お前が知った日だ」
「……先に聞いとくけど、俺のこと疑ってんの?」
何で俺が、そんなことしなきゃいけないんだ。
たしかに俺が月霞のことを大事に思っていたことは否定しない。
──あの人のことも、すくなからず尊敬していたのは本当だ。でも。莉胡が累側にいる今、どう考えたって俺が向こう側に協力する理由はない。
むしろあの人は、どうしようもなくまっすぐに自分を想っている莉胡のことを裏切った。
「……悪いな、千瀬」
ふっと、独白のように小さく言葉を落とした春は。
トモに視線を向ける。それだけでわかったように手元のノートパソコンをテーブルに乗せた彼は、その液晶を俺に向けた。
「……幹部に、
この写真を使って東で情報を収集させた」
画面にうつるのは、いつ撮られたのか俺と莉胡の盗撮写真。
盗撮なのに顔ははっきり俺らだとわかる。
「……まずお前の写真を見せるように指示した。
案の定反応はほとんどなかったらしいが、」
──莉胡の写真を見せたら、反応があった。
静かにそう告げる春に、妙に冷静な自分がいる。