彼女と会ってる、のね。

それなら邪魔するわけにもいかない、し。



「そっか、それならいいの。

いるなら声かけようと思っただけだから、」



「莉胡ちゃんが来たら、

『19時にはもどってくる』って伝言してって」



「え……?

あ、うん……わかった、ありがと」



約束も何もしていないのに、どうして伝言……?

用事があるなら、直接わたしにメッセージを送ってくるはずだ。それなのにわざわざ、彼が伝言を頼んだ理由は一体。



「とりあえず、19時すぎたらまた来るね」



おばさんにそう伝えて、一度家にもどる。

すぐにもどってきたわたしに、お父さんはきょとんとして。それから自分の映画のコレクションを引っ張り出してきて、観ようと言い出した。




「お父さんの映画のコレクション、

ほとんど千瀬と観たんだけど……」



「そう言わずに。

莉胡の好きなの選んでいいから」



さあ、とでもいうように広げられた腕。

その真下にあるコレクションたちは、たった数年で集められる量じゃない。



だけど、そのほとんどを千瀬と観てる。

それはつまり、彼と、どれだけ時間をともに過ごしてきたのかという証拠でもあるわけで。



「じゃあ、これにする」



「莉胡、相変わらずファンタジー好きだなあ」



そう言いながらプレーヤーにディスクをセットするお父さん。

ファンタジーは、好きだ。──わたしにとってファンタジーは夢の中の世界。だからこそ、たとえそれが幻想とわかっていても、現実とは別に望んだ結末が、手に入る。