「う、ううん……
べつにわたしはいいの……」
きっとそれは、東の、十色の仕業だ。
あの人は、手がかりを掴めないような仕事が得意だから。……いや、指示するだけで、実際に手を下しているのは、彼の下の人間。
『幹部揃って出掛けられるかはわかんねえけど……
とりあえず最低でも1日はお前のために空けるようにするから』
「……ありがと、織春。
心配だから、無理はしないでね。」
『ああ、わかってる。
……悪いな、幹部がそろそろもどってくるから、』
「うん、電話してごめんね。ありがと」
──ぷつ、と。
電話を切って、マーガレットのペンダントを指で撫でる。……昨日はずっと一緒だったから、電話だけだと、ほんのすこしさみしい。
「……、いるかな、」
シンと静かになった部屋は、ひとりだというのになぜか気まずくて嫌いだ。
はあ、と息を吐き出すと同時に吐き出した声で椅子から立ち上がると、階段をおりる。
「どこか行くのか?」
「ちょっと千瀬のところ行ってくる」
「ああ、いってらっしゃい」
玄関前ではち合わせたお父さんに「いってきます」を告げて、向かいの七星家。
インターフォンを鳴らせば、出てきたのはおばさんで。わたしの姿を見た彼女は、どこか困ったように微笑んだ。
「千瀬なら、
彼女と会う約束があるってさっき出かけたわよ」