稲やさんに届いた新年のご挨拶は、私がお返事しても失礼にならないものは私がお返事を出す。


稲やさん宛てに年賀状を出してくださるお客さんもいらっしゃるので、そういうもののお返事が主なお仕事。


明けましておめでとうございますと本年もご贔屓のほどよろしくお願いいたしますを両手で数えきれないほど言い、ご進物をお渡しして、たい焼きの優しい香りに包まれる。


からりと引き戸が開いた。白ばむ空気とともに入ってきたのは、瀧川さんだ。


「いらっしゃいませ。明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします」


お辞儀をすると、返礼して微笑んだ瀧川さんが静かに扉を閉めた。


「先日は丁寧なご連絡をいただきましてありがとうございました。すごく嬉しかったです」

「年賀状はお送りできなかったので、せめてもと思いまして。起こしてしまいませんでしたか」

「いえ、起きてたので大丈夫です」

「それはよかった」


お早いお返事だったので、起こしてしまったんじゃないかと思って、と言われた。


新年の挨拶を送った他の人たちからは、大抵もっとゆっくり返信が来たらしい。


あんまり遅いのも失礼かなって誤字脱字だけ確認してすぐ送ったから、返信が早かった自覚はある。