家族と年越しをして、みんなで遠くの除夜の鐘を聞きながらお蕎麦を片付けていたら、軽い通知音が鳴った。


「かおりの?」

「うん。多分明けましておめでとうって友達が連絡くれたんじゃないかな」

「マメだねえ」

「ね。ちょっとごめんね、返事しちゃうから先片付けてて。私のぶんは後でやっておくから」

「はーい」


家族割でみんな同じ機種を使っているうえ、好みが似ているのか同じ通知音を設定しているので、一緒にいるとたまに誰の通知音か分からなくなる。


今のは私のスマホから聞こえたから、多分私なはず。

ロック画面に表示するのは苦手で、基本バッジと履歴に表示をする設定にしてある。


みんなに了承を取って確認すると、メールが届いていた。瀧川さんだった。


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明けましておめでとうございます。瀧川です。
昨年は大変お世話になりました。

いただいたレシピで何度か練習してみたのですが、まだ練習が足りないようです。
今年こそはたい焼きがうまく焼けるように頑張ります。
上達したらご報告させてくださいね。

仕事が始まりましたら、また稲やさんにお会いしに伺います。
お会いできるのを楽しみにしております。

新たな一年が穏やかで充実した年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。
お風邪など召されませんようご自愛ください。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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瀧川さんの顔が浮かぶようだった。


お会いしに伺います、なんて。こまやかで穏やかで、丁寧な文面は、じわりとしみるほど優しい温かさに満ちている。


思わずぎゅっとスマホを握りしめながら、慌てて返事を打つ。