「瀧川さんはもうすぐ仕事納めですか?」

「そうですね。無事に納められるといいんですが」

「えっ、納められないかもしれないんですか……!?」


お仕事の都合でどうしてもばたばたするらしく、確実なのは有給を取ってしまうことなんだとか。


瀧川さんは少しだけ残っている有給を使い切ってしまうつもりらしかった。


「稲やさんは年末までお仕事ですよね?」

「ええ。でも私は稲中さんが融通してくださって、今日仕事納めなんです」


年末までしっかり入ったシフトを組んで出したら、休めるなら休めた方がいいか聞かれて、のんびりしてもいいかなって思っていると伝えた結果、年始が早いからそのぶん終わりも早めておくねって言ってくださった。

年末はみんなお蕎麦食べるからそんなに混まないし、大丈夫だよ、と。優しい。


瀧川さんがふわりと笑った。


「それはよかった。お会いできないのは残念ですが」


私もですと笑い返して、ひっそり考える。


……これくらいならいいだろうか。寂しいじゃなくて、残念くらいなら。


十三時、予約通りに来店した瀧川さんをお座敷にご案内して、お薄と小倉たい焼きをお出しした。


少しお話をするだけにとどめて、早めに切り上げる。


これ以上お話していたら、勝手にいろいろがこぼれそうだった。