からりと扉が開いた。


「いらっしゃいませ。おはようございます」


おはようございます、と答えた瀧川さんの耳と鼻が赤く染まっている。


「ホッカイロはご入り用ですか」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」


寒そうすぎて心配になるけれど、大丈夫ってことは大丈夫なんだろう。


そういえば、この前コートのポケットにホッカイロを入れてたから、ホッカイロはお持ちのはず。

でもまさか、耳にホッカイロを当てるわけにはいかないものね。鼻も同じ。


うーん、つけにくいのかもしれないけれど、イヤーマフが必要なんじゃないだろうか。私はつけている。


見ているとこちらにまで寒さがしみるような赤さを心配しつつ、暖かい店内で少しでもあたたまってもらえたらいいなあと話題を振った。話をした方が長居してもらえる。


「もうすっかり冬ですよね。もうすぐ今年が終わってしまうなんて信じられないくらいですが」


今年もあっという間だった。


季節ごとに変わるたい焼きのおかげでなんとか季節を追えているけれど、ときたま、もうそんな時期かあってびっくりしながらお仕事をしていた。


冬至に冬至かぼちゃを食べて、この前クリスマスで、今はもう年末で。

約束をして、お店の予約をして。

ばたばた大掃除を始めている。もうすぐおせちの準備も始まるはず。


そうして私は、今年もまた、この苦しくてしあわせな恋を更新する。