それからは、時間を忘れて2人で
ずっと話していた


いつのまにか知らない彼から

名前で自然と呼べるようになっていて

初めて会ったと思えないくらいに

話しやすくてなんだか落ち着いて、安心して

こんな気持ち初めてだった。


気づくとみえていた夕日は沈んでしまっていて
少し肌寒いくらいだった

ポケットから携帯を出してみると

〝19:27〟
不在着信10件

すぐ帰ると言ったことをすっかり忘れていた
不在着信は全部お母さんで。
樹に断りを入れて電話をかけ直した

【もう!美桜!どこにいるの!心配したじゃない!電話くらいでなさい!迎えにいくから!今どこにいるの?】

想像通りの反応をするお母さんをなだめて、
歩いて帰るから、といって電話を切った

『ごめん、もう帰らなきゃ』

樹にそう伝えると、


『電話、お母さん?もしかして怒ってた?』


『全然、心配性なだけだから』

〝大丈夫〟そういって立ち上がると、
〝送ってく〟と言って樹も立ち上がった


『いいよ、全然。すぐそこだし』


歩けば15分くらいでそんなに遠くもなかった

けれど、樹は私の言葉が聞こえてないかのように階段を降りていく

暗くて見えにくい階段は降りにくくて、
ゆっくり降りていると

降りていったはずの樹が戻って来て、


『何もたもたしてんの。』


そう言って掴まれた手は
強引なのに、なんだか優しくて


携帯のライトで地面を照らして
〝コケんなよ〟って笑った樹を見て

〝何カッコつけてんの〟って笑うと
〝俺ってカッコいいから〟と調子のいい
返事が返って来て、2人で笑いあった