(そろそろ空いたかな?)
図書室の棟を出ると、秋の初めの夕陽が校庭の木々をオレンジ色に照らして、長い影を作っていた。
職員室のドアを開くと、先生が自分のデスクにいるのが見えた。
ドクン…
いつもと同じ栗色の髪、どこか可愛らしい端正な顔に、思わず心臓が大きく鼓動する。
先生と私をつなぐものはもう何もない。
頭では分かってる。
でも心は…
今もあなたが好きです─
できることならあの夏の日みたいに
私のことだけを見ていて欲しい、
私だけを抱き締めて欲しい─
不意に先生が顔を上げ、思いがけず正面から眼が合う。
ドクン…
もう一度鼓動が鳴る。
でも次の瞬間には…
先生はその無表情な視線を机の上に落とす。
先生にとって私は過去の仕事のひとつ…
私は誰にも気付かれないような小さな溜め息を吐いて、村田の元に向かう。