突然ショートヘアの女の子がそう言った。



「え…」

「先生に色目使ってたらしこんだんでしょう?」



私はもう一度溜め息を吐く。



「初対面の人に、ましてや歳上に口を利くときはまず自分から名乗りなさい。

それから、真偽も分からないことにいきなり攻撃的なものの言い方をするものではないわ。
ちゃんと事実を確認するべきよ。」

私は諭すように言う。



彼女は不満げに唇を噛んだが、

「中学3年2組の落合です…」

と、素直に名乗った。



「私は高校3年1組の南条です。」

素直に応じた彼女に私も応えてあげる。



「先生に抱きついてキスしてたって本当ですか?」



(一応事実確認もするんだ。意外と素直なのね。)

なんて、私はどこか他人事のように頭の片隅で思ったりしていた。



「いいえ。」



「でも!

夏休みに校庭で先生と抱き合ってましたよね!?

私の友達が見たんです!」



「あぁその件?

それは



事実です。」



私が応えると落合さんの表情に怒りの色が浮かぶ。

そして、取り巻きの女の子たちと、
廊下のあちこちから私たちを遠巻きにちらちらと見ていた野次馬たちからざわめきが漏れる。