(そのことか…)



夏休みとは言え普通に昼休みの校内、ましてや屋外だ。

誰か見ていたのだろう。



頬が熱くなる。

と同時に掌に冷や汗が滲むのを感じる。



応えに窮して俯くと、

「どうなんですか?」

と岩瀬の鋭い声が畳み掛ける。



「ですからその件は…」

見かねた先生が口を開くけれど、

「南条さんに聞いているんです。」

と、岩瀬がぴしゃりと言う。



「どうなんですか?」

岩瀬がもう一度尋ねる。



これって…

私の応え次第では、私はともかく、先生が学校に居られなくなってしまうかもしれない?

どうしよう…



膝の上で重ねた両手を握りしめる。

痛いくらいに…



あの時私は…

下心がなかった、とは言えないと思う。



先生が好きだからああやって甘えて、その心地好さに溺れていたんだ。



でも相手は「先生」だし、場所は学校だし…



私の理性の飛んだ行動のために先生に迷惑をかけてしまう…



なんてことをしてしまったんだろう…



「南条君。」

ヤマセンがガラガラ声で優しく言う。

「何か言いにくいことがあるかね?」

「いえ…」



それでも私が俯いたまま話せずにいるとヤマセンが言った。



「じゃあまず初原先生に訊いてみようか。

先生、これは事実ですか?」



「はい。」



先生の真っ直ぐな応えに、心臓がこれ以上ないほど騒いだ。

先生は私と抱き合ったことをヤマセン達の前であっさり認めてしまった。