でも、時の流れはいつも無情で。

気付くと外はすっかり暮れ、夏の星が瞬いていた。



「ごめん!つい夢中になりすぎた。」

「全然いいよ。

ていうか…

ホントはもっと聞きたい…」

「そんなわけにはいかないよ。

うゎ、ヤバイな、もう8時じゃん…」

そう言って先生はまだ手元に散らばっている本や資料をまとめ始める。



「南条、ちょっと待って。遅いし、一緒に帰ろう。」

「え…」

「家どこだ?駅から遠いのか?」



驚いて言葉も出ない。

先生と二人で下校…

しかも先生、送ってくれる気だ…



「だっ!大丈夫!駅から近いしっ!!」

塾なんか行くともっと遅いし。



「俺が引き留めちゃったからさ。

南条に何かあったら俺の首飛んじゃうから、送らせて?」

「……」

「それに…」

「?」

「そしたらもうちょっと喋れんじゃん?」

「!!」



私がもっと聞きたいって言ったから?



私の顔を覗き込む先生の鳶色の瞳はまだ輝いたままで…



ねぇ、先生…



今私、どうしようもなく



あなたが…好き─

    *  *  *