「分からないことがあったらいつでも俺に聞きに来いよ。
大体英語準備室にいるからさ。」
会いに行っていいんだ。
いつでも…
「英語のことでも進路の相談でも遠慮なく聞いて。…あぁ、金の相談だけはされても無理だ。」
いたずらっぽい笑顔で言う先生に、私はふふっと笑う。
「はいっ!」
あぁ、私、先生の傍にいられるんだ。
教師と生徒でいい。
ただ、今あなたとこの優しい時間を分け合える、それだけでいい。
改札口で先生が見送ってくれる。
私が手を振ると、先生も振り返してくれた。
ホームへの階段を軽やかな足取りで駆け上がる。
白いワンピースの裾が風に翻る。
私はホームのベンチに座りバッグの中から本を取り出した。
図書館から借りてきた先生が薦めてくれた本だ。
私は本を胸に抱き締め、呟く。
「先生…好き。」
* * *