「ごめん。」



先生が言う。



私は涙を散らしてかぶりを振る。

先生のせいではないもの。

そして涙で声にならない声で、まとまらない言葉で先生に伝えようとする。



「今まで誰も、私の夢なんて、考えてくれたことなかったの。

私…自身でさえも。」



更に涙は溢れ、止まらなくなる。



諦めて流されて生きればいいと思った。

嫌になったら生きることをも捨てればいいと思った。



でも先生は唯一そんな私に光があることを教えてくれた。



先生が私の肩に手を回す。

掌の温度が制服越しに伝わってくる。

熱い、でも、心地好い。



その熱で氷が溶け出したかのように、私は押し込められていた感情が溢れ、一人では抱えきれなくなった。



「先生…」



私は先生の胸の中に崩れ落ちた。



先生は嗚咽する私の背に手を回し、優しく抱き締めてくれる。



思いのほか広く、熱く、力強い胸の中に包み込まれる感覚に、今までに感じたこともない大きな安息を感じる。

このまま時の流れをも塞き止めて、包まれていたい。

光を探す勇気を充足出来るまで─





ただ夏の昼下がりの熱い風だけが私たちを撫でていった。

    *  *  *