「南条はどこの大学受けるんだ?」



先生が尋ねる。

正直あまり訊かれたくなかった。



「国大…」

「へー。優秀じゃん。」

「…行く気ないけど。」

「え?志望校でしょ?」

「親のね。」



先生は私の言葉に少し驚いたように、大きな瞳を瞬かせた。



「じゃあ南条が行きたい学校はどこ?」

先生が言葉を変えた。



でも私の答えは…



「んー…ないかな?」

「ないの?」

「…うん。」



先生が首を傾げて私を見ている。

その瞳は夏の陽射しが反射して煌めいて見えた。

私は胸の内まで透かして見ようとするような先生の澄んだ視線に抗えず、なんとなく今まで大人には話したことがないことが口をついて出た。



「国大も親の希望で受けるけど、上手いことギリギリで落ちるつもり。

そのくらいのテクニックができるくらい国大の模試も点数良いし。」

「勿体ないな。」

「やりたくないことやって生きる人生の方が勿体ないと思ってるから…」

「そういう意味じゃないよ。」



そう言って先生は少し笑った。