「せんせ…」
沈黙に堪えきれなくなり、口を開いた時、
足音が近付いて来るのが聞こえた。
私たちがどちらからともなく飛び退くのと同時に、
「燃えるゴミの袋どこー?」
と言いながら後輩が顔を出す。
「…南条、早く冷やしとけ。保冷剤持ってくるから。」
「…はい。」
私は右手を流れる水に浸して、足早に戻っていく先生の背中を見送る。
入れ替わりに近付いてきた後輩が、
「先輩どうしたの…って、キャー!手、腫れてるじゃないですかぁ!?」
と声を上げる。
「大丈夫よ。あの…初原先生が…看てくださったから。」
この時、先生の名を口にするのに緊張してしまったのはどうしてだろう…
* * *