私が首を傾げるのと同時に、

「えーっ!!」

「キャー!!」

っと中学生達の悲鳴が上がった。

思わず窓から階下を覗き込む。



「せんせー彼女いるんだぁ!」

「えー!やだーっ!」

中学生が身悶えしている。



(えっと…その『彼女』って…それってもしかして…

うゎゎゎ!!)



かぁっと頬が熱くなるのを感じて、手袋の両手で頬を押さえる。

胸がドキドキし過ぎて息も出来ない…



すると、先生がふとこちらを仰ぎ見て、ばっちり眼が合った。



(!!)



先生も一瞬驚いた表情をして、それからにっこりと、いつもの目映いばかりの微笑みを向けた。



(ひゃぁ…!)

酸欠で目眩がする…



クラクラする頭で先生を見つめていると、先生はもう一度中学生に向き直る。

「質問が済んだなら帰りなさい。」

「言われなくても帰るもーん。」

「あーもー超ショック!」

「バイバイせんせー。」

と覇気のなくなった中学生達が正門にぞろぞろと向かって行った。



「気を付けて帰れよ。」

中学生を見送った後、先生は再びこちらを振り仰ぐ。



先生の綺麗な顔に冬の陽射しがきらきらと零れ落ち、いつにも増して格好良く見える。

その笑顔で先生はこちらに敬礼して見せた。



(!!)



激しい鼓動と目眩を感じて、私は慌てて窓から顔を引っ込めた。



(先生…格好良過ぎだよ…)



あんなにあんなに好きで、片想いしていた先生と今、心を通わせている。

その事実に胸が痛いほどにきゅんとする。



(先生…好き…)



恋ってこんなに幸せなものなんだ、ということを初めて知った。



高校生最後の冬。

貴方と過ごす日々が暖かで輝くものでありますように─



そしていざ!入試まであと2ヶ月─


     *  *  *


     ~上巻 end~