先生がゆっくりと腕の力を緩め、私の顔を覗き込む。

私が先生を見上げると、先生は人差し指をそっと私の唇に寄せ、そして静かに口を開く。



「その先は今は言わないで。



今は教師と生徒でいなきゃならないと思うんだ。

俺の想いのせいで南条の夢が叶わなかったら、俺は何をしたって償えないから。」



そう言って先生は柔らかく微笑む。

久しぶりに見た表情。私の好きな先生の顔。



「でもその夢が叶ったら、その時は俺から言うよ。



南条への想い全部。



生徒とか妹とか、そんなもので割り切れる想いじゃなくて。

一人の男として、一人の女性としての南条への想いを言うよ。



だから今は、一緒に待とう。春を。」



「先生…」



私も…

私も先生が

好き─



溢れそうになる言葉を飲み込む。

私のために、私の夢のために、それが叶うまでは想いをしまっておこうとしてくれる先生を困らせてしまわないように。



だから今は夢を叶えることで私の想いを伝えよう。先生の想いに応えよう。



先生が私を特別に思ってくれている。

それだけで私は今充分過ぎるくらい幸福なんだから。



そして春。

ひとつ夢が叶ったら…

その時は

その時は─