「舞奈まだー?」

「あ…」



清瀬くんの声に我に帰る。



「ごめん、もうちょっと!」



急いでやりかけの問題を終わらせると、机の上を片付けてコートとマフラー、それから手袋を身に付けた。



「お待たせ。行こう。」



自習室から出ると清瀬くんが大きく伸びをして言う。

「やっぱこれデートじゃねぇな。舞奈と全っ然話せねぇし。」

「しょうがないよ。受験生だもん、私たち。」

「あーもう!早く大学受かんねーかなー。」

「ふふっ。」



塾の建物から外に出ると途端に北風が頬を打つ。



「寒っ!」

「なぁ舞奈、手袋外したら?」

「なんでっ!?寒いじゃん!」

「手繋げねぇじゃん。繋いだ方があったかいだろ?」



清瀬くんが左手を差し出してくる。

私は右手の手袋を取って彼の手を握る。

そして清瀬くんはいつものように指を絡めて手を繋ぎ直す。



「んー、やっぱり手の甲が寒い。」

「贅沢言うな。マフラーしてんだからいいじゃん。」

「マフラーと手袋は別物だよ!」

「そのマフラー、可愛いしいいじゃん。」

「可愛くても関係ないの!」



ピンクのギンガムチェックのマフラーは中学生の頃から通学にも使っているお気に入り。

最近ちょっと子供っぽいかな、とは思っているけど。