(俺ってこんなに独占欲強かったっけ…?)



暮れ残った陽が僅かに射し込む教室にひとり佇む。

南条の出ていったドアを見ると彼女の哀しげな瞳が脳裏に閃く。



『用事、あって。』



南条がこれから向かう先─

それを思うと、まるで苦いものが込み上げてくるようなどうしようもない嫌悪感で目眩がしそうになった。

大人げないのは分かっている。

でも、堪えられなかった。



本当は

『彼氏、格好いいね。高校生同士お似合いじゃない?』

なんて言えれば良かったんだろう。



でも俺に言えた言葉は、

『羽目外すなよ。』

『そういうのは今は…慎んで欲しいかな。』

『勉強に集中して欲しい。』



格好つけたって結局はただの醜い嫉妬で。

そんな言葉で彼女を引き留めることは出来ないわけで…



気付いたら彼女に乱暴に想いをぶつけていた。



俺から退いた彼女の表情は、柔らかで輝きに溢れたいつものような彼女ではなかった。

その怯えたような瞳に取り返しのつかないことをしたと思うも、それはもう後の祭りで。



『ごめん…』

なんて言葉、なんの意味も持たず、君は俺を振り切って逃げた。



どうか持て余すほどの俺の想いが君を傷つけませんように─

そうずっと願っていた。



なのに、結局俺は身勝手に想いを押し付けて、聖女のような彼女を傷付けたんだ。

そして、そんな罪深い俺は純真な君にどんなにか似つかわしくないか思い知らされる。



君に向けた『ごめん…』という言葉をもう一度呟く。



「好きになって…ごめん…」