私は掌で口を覆い、俯く。



(先生…私…)



初めてのキスだった。

大好きな先生とのキスだった。



でも突然のことで。

それに先生は…



『当たり前だろ。

教え子好きじゃない教師とかダメでしょ?』─



先生が何を考えているか分からなくて、どうしていいか分からなくなる。

そして、自分自身も今何をどう思っているか分からないでいる。



そんな中、先生の視線が私に注がれているのを感じて、居たたまれなくなる。



(先生、なんで…キス、したの?

なんでそんな眼をするの…?)



頭の中が縺れたまま咄嗟に腕を掴む先生の手を振り切った。

そして手元のドアをがっと開いて教室を走り出る。

廊下を走り、階段を駆け降りるうちに涙が溢れてきた。



どうして先生に逢う度に涙が出るんだろう。

どうして涙が出るほどに好きなのに忘れられると思ったんだろう。

どうして先生は私を『生徒』だとか『妹』だとか言いながら、私の気持ちを離してくれないんだろう─

     *  *  *