「行こ、舞奈。」
清瀬くんが私の右手を取った瞬間、
「南条。」
正門から先生が姿を現した。
「先生…」
どきりと心臓が嫌な音を立てて跳ね上がる。
咄嗟に退こうとした右手を清瀬くんが強く握り締める。
そして、
「あ、舞奈の先生っすか?
いつも『彼女』がお世話になってまーす。」
清瀬くんは人懐っこい笑顔を先生に向けた。
「清瀬くんっ!」
繋がれた手を離そうとすると、逆に引き寄せられ、身体を清瀬くんの胸に収められる。
(あ…)
先生はどう思ったろうか。
反応が気になる。
でも…
怖くて先生の方を振り向くことが出来なかった。
「えっと…あぁ…」
先生の声。
そこに先生の気持ちは何も読み取れない。
「南条、俺明日使うプリント、コピーしてかなきゃならなかったから、先帰って。」
「あ…はい。」
「じゃ、また明日。」
先生は清瀬くんに会釈して踵を返す。
(先生…)
胸が痛い。
先生は私のこと、そして清瀬くんのこと、どう思ったろう…