「準備室の鍵返してくるから正門で待ってて。」

職員室に向かう先生とエントランスで別れる。



正門までの道は人気がなく、ただ落ち葉が舞っているばかり。

葉を振るった木立にひゅうと寂しげな音をたてて風が抜ける。




「寒…」

襟元のピンクのギンガムチェックのマフラーを押さえる。



一緒に帰ろう、って…

無意識に胸が高鳴る。けど…

でもそんな気持ちは本当は許されないの、分かってるから。



(辛いんだよ、凄く…

先生には分かんないだろうけど。)



正門を潜り、門柱の脇で足を止める。

俯くと、早々と点いた街灯の灯りで足元に落ちる影が眼に入る。



「舞奈。」



「!?」



不意に名前を呼んだその声に聞き覚えがあった。

いや、聞き覚えどころじゃない。



「清瀬くん!」

「ったく。遅ぇよ。」

「こっ!こんなとこで何してんのっ!?」

「お前のこと待ってんの。

だってほら、俺時間ねぇし。」

「時間?」

「お前の心の傷が癒えるまでに落とすって言ったろ?

元気になったんでもう結構です、って言われる前に攻めて攻めて攻め落とさないと、な。」

「!」



清瀬くんの紅茶色の髪が北風になびき、いたずらっぽい瞳がきらりと光る。