翌日の放課後。

私は英語準備室に向かっている。



本当はちょっと今日は先生に会いたくない─



けどこんな日に限って朝一先生から

『受験の件で聞きたいことがあるから放課後準備室に来て。』

とメールがあり、私は今、重い足取りで準備室へと向かっているわけだ。



いつものドアが今日は砦の門扉のように思える。

私はドアの前で一呼吸してノックをし、重々しく聳えるそれを開く。



「…失礼します。」

「あぁ、南条。待ってたよ。」



今日は先生の笑顔が眩し過ぎて見ていられなくて、さっと眼を逸らす。



「ま、座って。」

先生に促され、のろのろといつもの席に座る。



「夜璃子から電話が来て、願書の受付始まるけど書面とネットどっちで出願するんだ、って。」

「あ、それ私もメール頂きました。ネットにするから願書送って頂かなくても大丈夫、って返したけど…」

「あれ?行き違いになったかな?」

先生は首を傾げ、腕を組む。



「あの…それだけなら今日はもう…」

「ん?今日は訊いてくとこないの?」

「…うん。」

「…そっか。



あ。じゃあ、

俺も帰ろうかな。」



「え…」

「一緒に帰ろう?」

先生が机に手を突いてずいと私を覗き込む。