「ここを読めばcompletlyもallも違うのが分かるから、消去法で答えはAでしょ。
後はない?」
「先生…」
「ん?」
「先生私のこと…
好きですか…?」
ずっと胸の内に抑え込んできた問いがふと唇から零れ落ちる。
「えっ?」
赤本から顔を上げて先生を見つめる。
先生もまた私を見つめている。
先生の大きな瞳は更に大きく見開かれて、私の問いが先生を相当に驚かせたのが分かる。
見えない糸のように視線が絡み合う。
この糸を辿って、その瞳の奥にある先生の本当の気持ちが掴めたらいいのに…
時計の針だけが準備室に静かに響く。
『先生私のこと…
好きですか…?』
占いの応えを探して水晶玉を覗くように、私は先生の鳶色の瞳を覗き込む。
でもそこにその応えはなくて、ただ私が映るだけ。
静かに見つめ合う時間がどれだけ続いたろう。
先生が瞳を伏せた。
「当たり前だろ。
教え子好きじゃない教師とかダメでしょ?」