「なぁ舞奈、やっぱ俺と付き合ってよ。」

「……」

無意識に奥歯を噛み締める。



「…無理。」

「なんで?

俺そんなに嫌われるタイプじゃないと思ってるけど?」

「…好きな人がいるの。」

「片想い、てこと?」



私が小さく頷くと清瀬くんがブランコから立ち上がった。

ブランコがキシキシと鎖を鳴らして揺れる。

そして清瀬くんは私の後ろに回り込むと私を背中から抱き締めた。



「!!」


引き離そうとするけれど、清瀬くんはびくともしない。



「清瀬くんっ!」



「ソイツ、お前のこと好きなの?」



「!

…そんなの分かんないよ!」



『先生私のこと、好きですか?』─

ほんの少し期待して訊いてみたかった台詞。
でも訊けなかった台詞。

実際のとこ先生の気持ちは分からない。

だって─



「ソイツ、お前のこと好きって言えんの?」



「!!」



だって。

もしも、もしも万に一つでも先生が私を好きだったとしても、きっとそれは声に出すことは出来ないことで─



私は清瀬くんに何と返していいか分からず困り果てて、視線が泳ぐ。



「俺なら舞奈のこと幸せにできる自信あるけど?」



清瀬くんが囁く。



その言葉の裏の意味は?

『先生を好きでも幸せになれない』ってこと-?