「…?」
言葉も出ずぱちくりと瞬きして、男の子の顔を見上げたまま沈黙する。
(何…?)
「お前さ、」
それを先に破ったのは彼だった。
「東小出身じゃね?」
「え…」
「東小の南条舞奈。」
「!!」
なんで私のこと知ってるの?
名前に、出身小学校まで…
疑問を口にしようとしたが、それを遮るように先に彼が訊ねた。
「俺、誰か分かる?」
紅茶色の髪の背の高い男の子─
着崩した紺色のブレザーとゆるっと締めた臙脂のストライプのネクタイはおそらく県立西高校のもの。
切れ長の眼、薄い唇、鼻筋の通った大人っぽくシャープな印象の顔立ち。
「…ごめんなさい。」
多分会ったことない…と思うのだけど。
「分かんないの?」
「……」
分かんないも何も初めて会った、はず…
応えに窮して口籠っていると
「はぁ…」
彼は不機嫌に溜め息を吐いた。
「清瀬優翔。小学校、ずっと一緒のクラスだったんだけど?」
「…ごめんなさい。」
今度は名前を聞いても思い出せない失礼を詫びた。